第22話では、スリットから「イン逃げが有利なのか、不利なのか」をAIに判断させるために、まず自分なりの判定ルールを考えました。
今回は、そのルールを実際の過去データに当ててみます。
考えた条件が、本当にレース結果と関係しているのか。
ここを確認してみることにしました。
考えた「イン逃げ不利」の条件を過去データに当ててみる
今回使ったのは、これまで集めてきた過去のレースデータです。
第22話で考えたルールは、簡単に言えば、
外側の艇が、内側の艇をまとめて上回り、さらに1号艇にも並ぶか、それより速い
という状態になったら、「イン逃げ不利」と判定するというものです。
具体的には、2号艇〜6号艇を「外艇」として考えます。
例えば4号艇なら、4号艇より内側にいる2号艇・3号艇をそれぞれ0.05秒以上上回り、さらに1号艇にも同等以上のスタートをしている場合です。
この条件を満たす外艇が1艇でもいれば、
イン逃げ不利
とすることにしました。
もちろん、これはまだ仮説です。
まずは、このルールで分類したレースに何か傾向が出るのかを見てみます。
まずは「攻められる外艇の数」を見てみる
最初に確認したのは、イン逃げを攻められる条件を満たした外艇が何艇いたかです。
結果は、かなり分かりやすいものになりました。
| 攻められる外艇 | レース数 | 1号艇1着率 |
| 0艇 | 441 | 68.93% |
| 1艇 | 627 | 47.37% |
| 2艇 | 141 | 27.66% |
| 3艇 | 14 | 7.14% |
| 4艇 | 1 | 0% |
外艇が0艇だった場合、1号艇の1着率は約69%。
それに対して、攻められる外艇が1艇いると約47%。
さらに2艇になると約28%まで下がりました。
3艇になると、1号艇の1着率は約7%。
もちろん、3艇以上のケースはレース数自体が少ないので、その数字をそのまま信じることはできません。
それでも、
「1号艇を攻められる外艇が増えるほど、1号艇の1着率が下がる」
という傾向は確認できました。
これは、自分が考えた判定ルールを検証するうえで、かなり興味深い結果でした。
「有利」と「不利」で分けてみる
次に、今回のルールでレースを2つに分けました。
今回確認した1,224レースのうち、STが揃っていて判定できたのは1,189レースでした。
そのうち、
- 外艇が条件を満たさない → イン逃げ有利
- 外艇が1艇以上条件を満たす → イン逃げ不利
と分類しました。
イン逃げ有利
405レース
1号艇1着:
290レース
1着率:
71.60%
イン逃げ不利
784レース
1号艇1着:
337レース
1着率:
42.98%
単純に比較すると、
71.60% − 42.98% = 28.62ポイント
の差がありました。
これは、自分が思っていたよりも大きな差でした。
ただし、「不利=1号艇が負ける」ではない
ここは、かなり重要だと思っています。
「イン逃げ不利」と判定した784レースのうち、1号艇が1着になったレースは337レースあります。
つまり、
イン逃げ不利と判定されても、1号艇が勝つケースはかなりあります。
約43%です。
そのため、
「イン逃げ不利と判定されたら1号艇は負ける」
という意味ではありません。
今回確認したかったのは、
「イン逃げ有利」と「イン逃げ不利」で、1号艇の1着率に違いが出るか
ということでした。
その点では、ある程度はっきりした差が確認できました。
0.05秒という基準は本当に適切なのか?
もう一つ気になったのが、第22話で設定した0.05秒という数字です。
この数字を変えたら結果はどうなるのか。
そこで、
0.03秒、0.04秒、0.05秒、0.06秒、0.07秒、0.08秒
と基準を変えて比較してみました。
結果は以下のようになりました。
| 基準 | 有利側1着率 | 不利側1着率 | 差 |
| 0.03秒 | 70.93% | 46.23% | 24.69pt |
| 0.04秒 | 71.31% | 44.24% | 27.07pt |
| 0.05秒 | 71.60% | 42.98% | 28.62pt |
| 0.06秒 | 69.16% | 42.59% | 26.58pt |
| 0.07秒 | 67.19% | 41.80% | 25.39pt |
| 0.08秒 | 65.43% | 42.13% | 23.30pt |
今回調べた範囲では、0.05秒のときに有利・不利の差が最も大きくなりました。
そのため、現時点では0.05秒をそのまま使ってみることにしました。
ただ、ここも「0.05秒が正解だった」とまでは考えていません。
今回のデータで差が大きかった、というところまでです。
今後データが増えれば、結果が変わる可能性もあります。
「1号艇より速い」という条件も確認してみる
もう一つ確認したかったのが、
「外艇が内側の艇をまとめて上回る」だけでいいのか?
という点です。
もし外艇が2〜5号艇などを上回っていても、1号艇より遅ければ、本当にイン逃げ不利と言えるのか。
そこで、この条件を外して比較してみました。
すると、
- 外艇が他の内側艇を0.05秒以上上回るだけ → 1号艇1着率 52.73%
- さらに1号艇以上のスタート → 1号艇1着率 42.98%
となりました。
また、
他の内側艇には勝っているけれど、1号艇には負けているケース
では、1号艇の1着率は**71.60%**でした。
この結果を見ると、
外艇が他の艇を上回っているだけでは足りない。
1号艇に対しても同等以上であることが重要なのではないか。
という考え方には、ある程度納得できました。
今回の検証で分かったこと
今回、過去データにルールを当ててみたことで、少なくとも一つ確認できました。
自分が考えた、
「外艇が複数の内側艇を上回り、さらに1号艇にも並ぶ・上回る」
という状態を「イン逃げ不利」とする考え方は、実際の1号艇1着率ともある程度対応していました。
特に、
- 攻められる外艇が0艇 → 1号艇1着率 約69%
- 1艇 → 約47%
- 2艇 → 約28%
と、攻められる外艇が増えるほど1号艇1着率が下がっていました。
そして、「有利・不利」の2分類でも、
71.60% vs 42.98%
という差が出ました。
この結果を見て、自分としては、
「この考え方をAIに教えるためのラベルとして、一度使ってみてもよさそう」
と感じています。
それでも、まだ「正解」とは決めない
一方で、ここで「ラベルが完成した」とするのは早いと思っています。
今回確認したのは、あくまで、
自分で考えたルールによって分類した結果と、実際の1号艇1着率に差があった
ということです。
「イン逃げ不利」という状態そのものを直接観測しているわけではありません。
また、0.05秒という基準も、今回のデータでは良い結果になりましたが、今後も同じとは限りません。
さらに、「不利」と判定されたレースでも、1号艇が約43%勝っています。
なので、
このラベルが正解なのか?
という問いについては、まだ答えを出していません。
今の段階では、
「AIに学習させるための仮の正解として、検証を続ける価値はありそう」
というところです。
次は「このラベルをどう予測するか」
ここまでで、AIに教えるための「正解」の候補を、ひとまず作ることができました。
次に考える必要があるのは、
「では、レース前の情報だけを使って、この有利・不利をどう予測するのか?」
ということです。
実際のレースが始まってから分かるスタートタイミングを使えば、今回の判定はできます。
でも、それでは予測になりません。
レース前に分かっている過去の選手データから、
「この6艇の組み合わせなら、イン逃げ有利になりそう」
「今回はイン逃げ不利になりそう」
と判断できるようにする必要があります。
次は、ここを考えていくことにしました。
