競艇のスタートは、6艇それぞれが独立して決まるものなのだろうか?
これまでの自分は、選手ごとの平均STやSTのばらつきを見ながら、6艇それぞれのスタートを考えていました。
でも、レースを見ていると、どうもそれだけではない気がします。
前回は、選手ごとの平均STに「ばらつき」を加えることで、スタートを確率的に予測できないかを調べました。
しかし、平均ST+標準偏差で確率予測を試してみても、予測性能は思ったようには改善しませんでした。
そこで、少し視点を変えて考えることにしました。
以前から、
「スタートするとき、選手は他艇との位置関係を意識しているんじゃないか?」
と感じていたからです。
YouTubeで選手が出ている動画を見たときにも、スタート時の他艇との関係性について話しているのを聞いたことがあります。
そう考えると、
「競艇のスタートには、艇同士の関係性があるのでは?」
という疑問が出てきました。
今回は、これをデータで確認してみることにしました。
まずは1号艇と他艇の相関を調べてみる
最初に確認したのは、1号艇と2〜6号艇のSTの相関です。
結果は次のようになりました。
組み合わせ相関係数
- 1C × 2C 0.632
- 1C × 3C 0.563
- 1C × 4C 0.352
- 1C × 5C 0.285
- 1C × 6C 0.269
数字を見て、まず感じたのは、
「感覚と合っていて驚いた」
ということでした。
特に印象に残ったのが、1〜3コースと4〜6コースで、かなり傾向が分かれていたことです。
自分がレースを見ていて感じていた、
- 1〜3コースのスロー勢
- 4〜6コースのダッシュ勢
という分かれ方が、STの相関にも表れているように見えました。
もちろん、相関があるからといって、それだけで「お互いに影響している」とは言えません。
それでも、レースを見ていたときの感覚とデータの傾向が近かったことは、かなり印象に残りました。
隣り合うコース同士の相関も強かった
さらに1号艇だけではなく、6艇すべての組み合わせを見てみました。
すると、隣り合うコース同士で比較的強い相関が見られました。
例えば、
- 2C × 3C:0.733
- 4C × 5C:0.705
- 5C × 6C:0.698
といった数字です。
1号艇との相関だけを見ていたときも感じましたが、やはりスロー勢とダッシュ勢の中で、近いコース同士の動きがまとまっているように見えます。
ここまで来ると、
「やっぱり競艇のスタートって、艇ごとに完全に独立しているわけではないのかな?」
と考えるようになりました。
ただ、ここで一つ気になることがあります。
これは「速い選手が集まっているだけ」では?
相関があること自体は分かりました。
でも、それだけでは本当にスタートに関係性があるのかは分かりません。
例えば、STの速い選手が同じレースに出ていれば、そのレースでは複数の艇が速いSTになるかもしれません。
それなら、
「選手が速いから相関しているように見えているだけ」
という可能性もあります。
そこで、選手個人の影響をできるだけ取り除いてみることにしました。
自分が知りたかったのは、
選手の影響をなくしたとき、そもそも競艇のスタートにはどのくらい関係性が残るのか?
ということです。
選手の影響を取り除いてみる
選手ごとのスタートの速さによる影響を取り除いた状態で、もう一度相関を確認しました。
すると、相関係数は確かに下がりました。
例えば、
選手要因を取り除いた後
- 1C × 2C 0.481
- 1C × 3C 0.407
- 4C × 5C 0.554
- 5C × 6C 0.698
という結果でした。
選手の影響を取り除くと、当然ながら相関は弱くなりました。
ただ、
完全になくなったわけではありません。
自分の感覚としては、
「ある程度ありそうだな。全くないことはない」
という感じでした。
この結果なら、少なくとも今の段階では、この方向の分析を続けてみてもよさそうです。
ただし、ここでも一つ注意が必要です。
相関が残ったからといって、ある艇が別の艇のスタートを直接動かしていると決まったわけではありません。
同じレース条件など、別の要因によって相関が生まれている可能性もあります。
まずは「艇同士のSTに、何らかの関係性がありそうか」を見ている段階です。
「相関がある」だけでは、どの程度なのか分からない
ここで、もう一つ気になりました。
相関係数を見れば、関係性がある程度強いのか弱いのかは分かります。
でも、
「実際にはどのくらいSTが動くんだろう?」
というところまでは分かりません。
そこで今度は、
ある選手のSTが0.01秒変化したとき、他の艇のSTがどのくらい変化するのか
を見ることにしました。
相関があるとしても、それが実際のSTの変化としてどの程度のものなのかを知りたかったからです。
選手によって、周囲との連動の仕方が違う
分析してみると、選手によってかなり違いがありました。
例えば、堀之内紀代子選手は、他艇とのSTの相関がかなり低いケースでした。
自分のSTが変化しても、他艇のSTはほとんど動かない。
一方で、選手やコースによっては、ある程度周囲と同じ方向に動くケースもありました。
この結果を見て、
「相関があるからといって、全員が同じように動いているわけではないんだな」
と納得しました。
自分の感覚としても、スタートで積極的に攻めるタイプの選手がいる一方で、スタートで突出するタイプではない選手もいる印象があります。
そう考えると、選手によってスタートの取り方や周囲との関係性が違うというのは、感覚的にもそれほど不思議ではありませんでした。
では、誰かが「基準」になっているのでは?
ここまで調べてくると、また新しい疑問が出てきました。
もし艇同士にある程度の関係性があるのなら、
「レースの中で、誰かのスタートを周りが基準にしているのでは?」
ということです。
この時点で自分が考えていたのは、
「スタートが速い選手がいた場合、周りの選手がその選手を意識するのではないか」
という仮説でした。
例えば、スタートが速い選手がいれば、
「この選手には行かれたくない」
というように周りが意識して、自分のスタートにも何らかの影響が出る。
そんなイメージです。
ただし、これはあくまでこの時点で自分の中に出てきた仮説です。
本当に速い選手が周囲の基準になっているのか。
それとも、コースやレース全体の条件など、別の要因によってSTが連動しているのか。
この時点では、まだ分かりません。
スタートを「個人」ではなく「レース全体」で見る
今回の分析を始める前は、できれば6艇をそれぞれ独立したものとして扱えたほうが、AI開発としてはシンプルだと思っていました。
それぞれの選手について、
- 平均ST
- STのばらつき
などを計算して、その情報から各艇のスタートを予測する。
そのほうがモデルも考えやすそうです。
ただ、以前から「スタートには相関があるかもしれない」と思っていたこともあり、実際にデータを見てみることにしました。
すると、スロー勢・ダッシュ勢で傾向が分かれたり、隣り合うコース同士で強い相関が見られたり、選手要因を取り除いても相関が残ったりしました。
「じゃあ、相関を無視して進める」というのも違う気がします。
具体的にAIでどう扱うかまでは、まだイメージできていません。
でも、純粋にこのテーマ自体が面白い。
キーマンのような選手がいるのか、それとも別の要因があるのか。
もう少し調べてみることにしました。
まとめ
今回は、これまでとは少し違う視点からスタートを分析してみました。
分かったことは、
- 1〜3コース、4〜6コースでSTの相関に傾向があった
- 隣り合うコース同士では比較的強い相関が見られた
- 選手個人の影響を取り除いても、相関は完全には消えなかった
- 選手によって、周囲との連動の強さには違いがあった
- 「スタートが速い選手が周囲の基準になっているのでは?」という仮説が出てきた
というところです。
まだ「こういう仕組みだ」と答えが出たわけではありません。
ただ、これまで選手ごとに見ていたSTを、**「レースの中で他の艇とどう関係しているのか」**という視点で見ると、また違ったものが見えてきました。
次は、この関係性についてもう少し掘り下げてみようと思います。
あわせて読みたい
- 競艇AI開発日記 第25話|平均STに「ばらつき」を加えれば、予測は良くなる?
- 競艇AI開発日記 第24話|「イン逃げ有利・不利」を予測するための材料を探す
- 競艇AI開発日記 第23話|「イン逃げ不利」の仮説をデータで検証してみました
